認知症共生社会を実現する基本法への期待と要望(2021年6月)

6月1日、衆議院議員会館において「共生社会の実現に向けた認知症施策推進議 員連盟」の設立総会が開かれました。議員連盟設立は「基本法」に関する議論と立法を推し進めようというものです。

JDWGでは、議連発起人議員からの招きに応じて、 藤田代表が認知症の本人の立場から、3つの期待と要望を表明しました(リモートスピーチ)。

議員の皆様には、これからの未来を思い描きながら、認知症とともに希望を持って暮らせる社会を実現する基本法を世に送り出してくださることを、切に願っています。
今後も、私たち本人との対話を重ねていただきたいと思います。


配付版PDFファイルはこちらから(A4サイズ/両面で印刷できます)


1.古い認知症観を脱し、社会全体が希望と活力のある共生社会を創出するための基本法を

○今、認知症の古い常識(価値観)から抜け出して、希望を持って前向きに生きていこうという本人が、全国で着実に増えてきています。
*たとえば、一足先に前向きに暮らしている本人が、診断直後に落ち込んでいる本人や家族を勇気づけたり、認知症の症状と向き合いながら経験したことや生活の工夫を地域住民や専門職に発信し、これから認知症になる人が備えるために本人だからこそできる役割を果たしている人も出ています。
「認知症とともに生きる希望宣言」をご覧下さい。

○私たち本人が、地域社会の中で活き活き暮らし続ける姿をみることでその家族もこれまでとは違う視点で、本人の可能性に気づき、家族としての新たな関係を再構築していく人たちも増えています。

○また、一人暮らしの認知症の本人も増えており、一人であっても希望を持ちながら地域社会の中で自分らしく暮らし続けることにチャレンジする本人が年々増えています。

○一方で、古い認知症観のまま、本人がもっている力を思うように発揮できず、心身をすり減らし自分らしい暮らしを送れなくなっている本人がたくさんいます。

○今後、医療や介護等の研究や技術が進展しても、社会の認知症観が古いままでは、本人にとっての安心とよりよい生活には結びつきません。

○超高齢化がますます進展する今後、希望と活力ある共生社会を実現していくためには、立場や職種、世代を超えて、全国民が「古い認知症観」から脱却して「認知症とともに希望を持って生きる」新しい認知症観をあたりまえにしていくことを強力に推進していくビジョンとミッションを掲げた基本法を強く希望します。

2.目的と理念に「人権」を明記し、すべての取組みの基本に:自分事として

○認知症になった当初も、また、認知症が深まってからも、人として暮らしていく上でのあたりまえのこと(人権)が蔑ろにされている現状があります。

○先ほど述べた新しい認知症観を、日々の暮らしの中で具体的に実現していくためには基本法の目的と理念に「本人の人権」を明確に掲げることを強く要望します。

○そして、自宅で暮らしていても、施設や病院で暮らすようになってからも、人としてあたりまえのことが守られる暮らしと地域を確実に作り出していくことを支えるための基本法になってほしいと切に願います。

○これらのことは、自分が認知症になった先の暮らしを考えた場合、誰もが願うことだと思います。人権が守られることを明記した法ができることで、中高年者はもちろん、若い人も含めてすべての国民がこの先を暮らしていく上での大きな安心と希望につながることになることでしょう。

○国際的に超高齢化の先進国である日本が、基本法を世界に向けて堂々と発信していけるためにも、人権を法の基本とすることが欠かせないと考えます。

3.市町村・都道府県が、本人参画で共生のまちづくりを展開していく推進を

○現状としては、住んでいる自治体によって行政としての認知症観や取組みの方向性・実際に大きな較差があります。私たち本人からみると日々を暮らしていく上での安心感や暮らしやすさに大きな違いが生じていることが、切実な問題になっています。

○どんなにいい基本法がつくられても、自分が暮らしている自治体での取組みが進展しなければ、安心して暮らしていくことができません。

○市町村・都道府県が計画や実施、評価を進めていく過程で、認知症の私たち本人が参画でき、本人の視点や声を実際に活かしながら取組みを年々着実に進展させていくことを、基本法にしっかりと明記していただくことを要望します。

○私たちの望む暮らし方や地域のあり方は、暮らしている地域の文化や特徴によって異なります。暮らしている自治体・地域ならではの自主的で自由度の高い取組みを本人ともに着実に推進していくことを後押しをする、そんな基本法が策定されることを望んでおります。