「認知症共生社会を実現」する基本法の立案を~ともによりよく生きる未来志向の基本法への期待と要望(2023年2月)

JDWGでは、「共生社会の実現に向けた認知症施策推進議員連盟」(2021年6月設立)の議連党代表会議議員から有識者ヒアリングの招きに応じて、藤田代表が2023年2月に議連党代表の方たちと意見交換を行いました。

日本認知症官民協議会(2019年4月設立)においても、設立当時より、当法人は当事者団体として参加し、藤田代表は実行委員として参画していますが、厚生労働省による部会と並行して、経済産業省による部会にも参画し、経済・産業界の方々が、新しい認知症観を積極的に取り入れ、社会が認知症共生社会に向けて大きく舵を切り始めていると、心強く感じています。

今年度は「認知症施策推進大綱」の中間年にあたり、2022年10月に「認知症施策推進大綱の進捗状況の確認」が出され、次に進む大きな節目を迎えている状況も踏まえ、基本法に対する緊急提案を出すことが必要と思いました。

基本法を立案する議員の方々に、超高齢化が進む中で、「認知症発症前も、発症後も、症状が進行する中でも、国民みんなが、希望をもって暮らしていける価値観を共有した活力ある社会」を築いていくための未来志向の法を世に送り出してくださることを、切に願っての提案です。

JDWGでは国会議員の方々に、基本法を「立案するプロセス」で、私たち本人との対話を重ねていただきたいことも、これまで繰り返し要望してきております。基本法が立案される途上で、国会議員の方々や国会でどのような議論がなされ、どのような内容になっていくのか注目していきたいと思います。

これからも、前向きに、かつ冷静に、本人の声が届く活動をしていきたいと思います。


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基本法は、この先長きにわたって、国民や認知症施策の方向性を導く羅針盤となると思います。長年をかけて多くの人たちが試行錯誤や議論を重ねてようやく端緒についた「認知症共生社会」の実現を、さらに着実に、未来に向けて力強く牽引するための法になってほしいと強く期待しているところです。時代を逆行させるような法にならないよう危機感をもって、以下3点を提案します。

1.基本法の目的・理念に、「認知症共生社会の実現」と人権の明記を

○認知症は、非常に多くの病気がきっかけとなって、「生活上の困難が生じている状態」の総称であり、私たち認知症の本人は、百人百様の生活・人生を歩んでいます。

○私たちは、これまでの歩みの中で、認知症についての見方も含め地域社会の環境がよりよく変われば、病気があっても、病状が進みゆく中でも、自分らしく幸せに暮らせる可能性が大きいことを体験とともに実感しています。

○医学や技術が進んだとしても、超高齢化がますます進む日本では、認知症になることは避けて通れない現実です。「希望をもって自分らしく暮らせる共生社会の実現」のための基本法をつくることが、今と未来の国民全体の幸せと社会の活力につながる合理的な考え方だと思います。

○諸外国の本人たちとの交流を通じて、その考え方の重要性を強く感じています。先進国では、もはや医学モデルを脱却して、人権をベースにした社会づくりが進められています。

世界に先駆けて超高齢化が進んでいる日本こそ、基本法の目的と理念に、「立場や世代を超えてともに認知症共生社会を実現すること」を掲げ、人としてあたり前のこと(人権)が守られる社会をつくることを明記していただきたいです。

2.基本法の名称は「認知症共生社会基本法」に

○基本法の名称自体が、民産学官すべての国民に、法の目的や理念のポイントをPRすることになり、これまで長年の議論を踏まえて、名称を熟慮・決定すべきです。

○もし「認知症基本法」とされてしまえば、いかに中身で書きこんだとしても、「症状等への対策に関する法」「症状等に注目することが、今後の国の重要テーマ(人や共生は埋没)」という、極めて前時代的なメッセージが国民に流布され、進むべき社会のあり方を逆行させかねません。

○基本法の名称は、目的・理念を国民すべてに、一目で伝えていくために「認知症共生社会基本法」とすべきだと考えます。

3.日本全国、どこで暮らしていても本人参画で、地域共生を実現可能にする基本法に

○どんなに立派な内容が法に書かれても、私たちが暮らす全国の自治体や地域での実現が困難であれば、絵に描いた餅の基本法になってしまいます。

○少子高齢化が急速に進み、地域の担い手や医療・介護等の人材不足、お金の不足が、地方のまちでも都会地でも深刻です。一部のモデル的な地域や先端技術につながれた人のためだけの法ではなく、どこの自治体や地域であってもそこで暮らす本人が、参画しながら、希望をもってともに生きていくための地域社会づくりを実現可能にする基本法を、強く望みます。